ヒトゲノム計画(2003年4月解読完了)により、ヒトゲノムに含まれる遺伝子数は約3万個であることが分かりました。
この計画以前には、ヒトゲノムの遺伝子数は10万個以上と予想する科学者もいたようなので、判明したその数の少なさに発表当時は大きな衝撃を与えました。
ちなみに最新の推定値は2万1787個(「Nature」2004年10月)とされ、更に少なくなっています。
ヒトの遺伝子を解明しようとする動機としては、昔から「生まれ」か「育ち」か(Nature vs Nuture)が激しい論争の的となってきたことが挙げられます。
ヒトは、「生まれ」つまり遺伝子で決まってしまうのか、それとも「育ち」つまり環境や生活習慣で決まっていくものなのでしょうか。
それぞれの理論を支持する人達はしばしば両極端な立場(遺伝決定論者と環境決定論者)を取ってきました。
しかしながら、本著者のマット・リドレーは、「生まれ」か「育ち」か(Nature vs Nuture)という二項対立の図式は誤りであり、「遺伝 対 環境」の時代は終わりを告げたのだといいます。
「生まれ」は「育ち」を通して(Nature via Nuature)決まっていくものだと(相互作用論)。
遺伝子はまだまだ分かっていないことが多くありますが、著者のバランスの取れた視点を通じて、遺伝子と環境との関係について理解するのにはとても良い本だと思います。
原著: